考えてみれば、バスでトルコまで行くなどという旅は、普通の旅をしてきた人にしたら、雲をつかむような道のりなのかもしれなかった。さまざまな不安が頭をもたげたのに違いなかった。まあ、なんとかなるだろうと思っているのは、これまで四回も陸路でヨーロッパまでの道を経験してしまった僕の“旅の老檜”のようなものなのかもしれなかった。三人で記念撮影をすることになった。カメラマンが三脚の上にカメラを固定し、その前に三人が立つ。
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準備をしながらカメラマンがぽつりといった。「水戸黄門のドラマみたいなもんですかね」僕が五十一歳、カメラマンが四十歳、H君が三十歳。ふたりが助さん、格さんとなれば僕は黄門様ということか。髭にはかなり白髪も混じっている。黄門様がもつ印箭はさながら僕が手にする菊の紋章がついたパスポートということなのかもしれないが、僕のパスポートには、さまざまな国のビザやスタンプが捺されている。「この紋所が目に入らぬか」とパスポートを差し出したところで、イミグレーションの職員は、「本当に観光旅行なの?」と疑うような代物なのである。空港の出口に屯する客引きを揉み手で近づけてしまうパスポートなのだ。頼りになるのは、金と体力と若干の気転しかない。そんな旅がまたはじまってしまうのである。